ホスピスの基礎知識

難病の方が入居できる介護施設とは?介護施設の選び方と入居条件を解説

2025.05.07 2025.05.07

家族が難病を患い介護が必要となった際、自宅で介護するべきか、今後のことを考えどこかの介護施設への入居を検討するか、そもそもどのような選択肢があるのか悩む方も多いでしょう。

本記事では難病の方でも入れる介護施設の紹介と、その選び方について解説します。各施設ごとの特徴もあわせて紹介しているので、ぜひ施設選びの参考にしてください。

【この記事のポイント】

  • 受け入れ可能な代表介護施設は有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、特別養護老人ホーム(特養)
  • 病状の変化や必要な医療ケアは事前に施設へ正確に伝えることが重要
  • 介護施設選びは、ホームページや資料だけでなく、実際に見学・相談して雰囲気を確認すること
  • 入居後のミスマッチを防ぐためにも、受け入れ体制や対応範囲を事前に確認すること

そもそも難病とは?

難病とは、医学的に原因が不明または治療法が確立されていない病気を指します。日本では、厚生労働省が難病対策を進めており、「難病法」に基づいて支援が行われています。難病の具体的な特徴として以下が挙げられます。

  • 治療法が未確立:根本的な治療が難しい
  • 症例が少ない:全国的な患者数が限られている
  • 長期治療が必要:生活や日常活動に影響を与える

難病の患者は、病院によっては受け入れが難しい場合があります。その理由として、専門医や設備の不足、急性期治療を優先する医療体制、療養病床の不足などがあります。また、長期治療が必要な難病患者のケアは複雑で、病院の収益面での課題も影響しています。

参考:厚生労働省「難病対策」

難病の具体例

難病にはさまざまな種類がありますが、難病法に定められた難病のうち、医療費助成の対象となる難病を「特定指定難病」といいます。具体的には以下のような難病が挙げられます。

  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • パーキンソン病
  • 脊髄小脳変性症
  • 多発性硬化症

難病患者でも入居が可能な介護施設とは

難病の患者が入れる介護施設は大きく分けて4つあります。ここではそれぞれの施設について解説します。

  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
  • 特別養護老人ホーム(特養)

有料老人ホーム

有料老人ホームとは、高齢者が自立した生活を送りながら、必要に応じて介護や生活支援を受けられる民間運営の施設です。主に民間企業によって運営されており、居住環境やサービス内容が多様で、個々のニーズに合わせた選択が可能です。

有料老人ホームの種類は、大きく分けて以下の3種類となります。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム
  • 健康型有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームでは、24時間体制で医療ケアを提供している場合があり、ALSやパーキンソン病など医療ニーズの高い患者に対応できることがあります。

一方、住宅型有料老人ホームは外部の訪問看護や診療に頼るため、症状が安定している方に向いています。

健康型有料老人ホームは、基本的に要支援の方が入居する施設となっており、要介護に区分された場合は退去が必要になります。

難病患者を受け入れられるかどうかは施設の種類や運営方針、そして医療体制によって異なります。特に、難病は疾患ごとに必要なケアが大きく異なるため、施設へ事前に確認することが重要です。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅は、安否確認や生活相談サービスなどを受けられるバリアフリーの賃貸住宅です。安否確認と生活相談サービス以外のサービス内容については施設により異なり、入居は60歳以上または60歳未満の要介護認定を受けた方が対象です。

サ高住は一般型と介護型に分けられます。介護型は、要介護度が高くなっても入居を続けられることが多いですが、一般型は要介護度が高くなると退居を求められることがありますので、退居要件についても確認が必要です。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の高齢者を対象に、日常生活全般を支援する公的な介護施設です。主に地方自治体や社会福祉法人が運営しており、介護が必要な高齢者に対し、食事や入浴、排せつなどの日常的なケアを提供しています。

特養の最大の特徴は、24時間体制の介護サービスが受けられることです。入居者の生活を支える介護職員が常駐しており、日常生活の中で必要な支援を提供します。また、公的な施設であるため、他の介護施設に比べて費用が抑えられる点もメリットです。

特養は、重度の身体的・精神的な介護が必要な方を対象としているため、自宅での生活が難しく、継続的な介護が必要な方にとって重要な受け入れ先となっています。ただし、基本的には「要介護3以上」の認定を受けた方が入居対象となり、要介護1・2の場合は特例を除いて入居は難しいので注意が必要です。

介護施設を選ぶポイント

難病の方が介護施設を選ぶポイントは3つあります。

  • 疾病に対しての理解度や受け入れ実績
  • 医師や看護師などの人員配置
  • 他の入居者の年代

疾病に対しての理解度や受け入れ実績

自身の抱える疾病がどの程度理解されているのか、受け入れ実績のある施設、職員がいるかは大事なポイントです。今後の病状の変化や、その際必要になる医療や介護などを正しく伝え、どこまで対応してもらえるのか相談しましょう。

直近で同様の疾病や症状の受け入れ実績がある施設であれば、体制が整っているため安心です。

医師や看護師などの人員配置

疾病によっては、将来的に常時医療ケアが必要となることがあります。医師や看護師の人員配置や、24時間対応できる体制かなどは事前に確認しましょう。

他の入居者の年代

見落としがちなのが他の入居者の年代です。介護施設は70代や80代の方が多く入居しています。難病により60歳未満で介護施設に入居する場合、他の方との年齢差が大きいため、話し相手となってくれそうな同年代のスタッフやボランティアの方がいるかなども確認してみましょう。

終末期の方はホスピスもおすすめ

終末期の方であれば、前述の介護施設以外にもホスピスなどの選択肢もあります。

ホスピスは、終末期の患者が残りの時間を穏やかに過ごすことを目的とした医療・ケアを提供する施設またはサービスを指します。特に、がんや難病など治療が難しい病気の患者に対して、痛みや苦痛を緩和し、心身ともに安らぎを与えることを重視しています。

難病患者の受け入れを積極的に行っているホスピスなど、おすすめの施設を3件紹介します。

ナーシングホームのスーパー・コート

スーパー・コートは、がん末期や厚生労働省が定める別表7・8に該当する疾病・状態の方のケアに必要な重度医療体制が整ったナーシングホームや、パーキンソン病や脊髄小脳変性症などの神経難病に特化したリハビリ特化型ナーシングホームを運営しています。

提携医療機関と連携し、急変時の検査や緊急搬送、入院などの体制が整っており、高度な医療サービスが充実しています。

出典:スーパー・コート

医療施設型ホスピスの医心館

医心館は医療施設型のホスピスで、医療依存度が高い方の受け入れを行っています。日本全国に展開している施設で、地域に応じたケア体制が整っており、人工呼吸器管理や褥瘡の処理など専門的な医療ケアも行っています。

出典:医心館

ホスピス型住宅のReHOPE

ReHOPEはがん末期や神経難病の方のためのホスピス型住宅です。筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病、多系統萎縮症などの受け入れ実績があり、施設には訪問看護・介護事業所が併設されているため、24時間手厚いケアを受けることができます。

出典:ReHOPE

まとめ

疾病によっては、将来的に常時介護や医療が必要となる可能性があります。入居の際に今後起こりうる病状の変化など、必ず説明するようにしましょう。病状について説明しきらずに入居すると、悪化した際に施設で対応がしきれず退居を求められたり、十分なケアや医療を受けられない可能性があります。

また、ホームページや資料を比較することも重要ですが、実際に働く職員や施設内の雰囲気を知ることができるため、入居を検討している施設へは見学や直接相談をしてみましょう。

FAQ

難病患者でも受け入れてもらえるか事前に確認するには?

まずは施設に電話やメールで連絡し、現在の病状や診断名を伝えたうえで、受け入れ実績や医療対応体制について確認しましょう。また、直近で同じ病気の方の入居実績があるかも確認できると安心です。

可能であれば主治医の意見書や診断書を事前に提出し、施設の医療担当者に相談しておくと、入居後のトラブルを避けられます。見学時には、職員との面談で具体的な医療ニーズにも対応できるか詳しく聞くようにしましょう。

難病患者を受け入れている介護施設については、本記事内「難病患者でも入居が可能な介護施設とは」をご確認ください。

介護施設とホスピスの違いは何ですか?

介護施設は日常生活の支援や介護サービスを中心に提供する施設で、長期的な生活の場として利用されます。一方、ホスピスは終末期(ターミナル期)にある方が、限られた時間を心身ともに穏やかに過ごすことを目的とした施設です。

ホスピスでは痛みの緩和や精神的サポートなど、緩和ケアを重視した医療サービスが提供される点が特徴です。病状や生活の目的によって、どちらを選ぶかを検討することが重要です。

ホスピスの詳細については、本記事内「終末期の方はホスピスもおすすめ」と別記事「ホスピスとは?緩和ケアとの違いやケアの受け方を簡単に解説」をご覧ください。